監修:うえだ小児科 院長 植田香子(小児科専門医)

「うちの子、3日うんちが出ていないけれど大丈夫かな」「病院に行くほどのことなのか分からない」——小児科の外来で、保護者の方から本当によくいただくご相談です。

子どもの便秘は「そのうち出るだろう」と様子を見られがちですが、実は放っておくと悪循環に入り、治すのに時間がかかってしまうことがあります。一方で、早めにご相談いただければ、生活の工夫とお薬で比較的スムーズに改善するお子さんがほとんどです。

この記事では、「どこからが受診の目安なのか」を、小児科で実際に確認している7つのサインに沿って整理しました。ご家庭でのチェックにお役立てください。

この記事でわかること

  • ・子どもの「正常な排便回数」の目安
  • ・小児科に相談すべき7つのサイン
  • ・すぐに受診してほしい、様子見が禁物のサイン
  • ・便秘で受診したときの診察の流れ
  • ・よくあるご質問(Q&A)

まず知っておきたい、子どもの「正常な排便」

排便の回数には、大人と同じように子どもにも個人差があります。「毎日出ていないから便秘」というわけではありません。年齢によっても大きく変わります。

年齢 排便回数のおおよその目安
生後0〜3か月(母乳) 1日数回〜数日に1回まで幅が広い
生後6か月〜1歳 1日1〜2回程度
1〜3歳 1日1回前後
4歳以降 1日1回〜2日に1回程度

大切なのは回数そのものより「出すときにつらくないか」です。2日に1回でも、やわらかい便がスルッと出て本人がけろりとしているなら、心配はいりません。

目安として、国内の小児の診療ガイドラインでは「排便が週に2回以下」「5日以上排便がない」といった状態を便秘と考えます。これに当てはまる場合は、一度ご相談いただくタイミングです。

小児科に相談すべき7つのサイン

次の項目に1つでも当てはまるようであれば、受診をご検討ください。「これくらいで来ていいのかな」と迷う必要はまったくありません。

① 排便が週2回以下、または5日以上出ない日がある

もっとも分かりやすい目安です。便は腸に留まる時間が長いほど水分を吸収されて硬くなるため、間隔があくほど「次がもっとつらくなる」という悪循環に入りやすくなります。

② 便が硬く、出すときに痛がる・泣く

コロコロした兎のふんのような便、あるいは便器が詰まるほど太くて硬い便が出ている場合は、すでに便秘の状態です。いきんでも出ない、顔を真っ赤にして泣く、といった様子も受診のサインです。

お子さんは「痛かった」という記憶を強く覚えています。この体験がのちの排便我慢につながるため、痛みを伴う排便は早めに断ち切ってあげたいところです。

③ 便やトイレットペーパーに血がつく

硬い便で肛門が切れている(裂肛)ことが多く、ほとんどは便秘の改善とともに治まります。ただし出血が続く場合や量が多い場合は、ほかの原因を確認する必要があります。「たいしたことないだろう」と自己判断せず、一度ご相談ください。

④ 下着に少量の便がついている(便もれ)

これは見落とされやすい、けれど重要なサインです。「下痢気味なのかな」「おむつが外れたのに失敗が増えた」と受け取られることが多いのですが、実際は逆で、溜まった硬い便のすき間から、ゆるい便が漏れ出している状態であることが少なくありません。

お子さん本人も気づかずに漏れてしまうため、叱っても改善しません。便秘のサインとして受け止めてあげてください。

⑤ 繰り返す腹痛、お腹の張り、食欲の低下

「よくお腹が痛いと言う」というお子さんの原因として、便秘はとてもよくあります。朝の登園・登校前に痛がる、機嫌が悪い、あまり食べたがらない——こうした様子が続くときは、お腹に便が溜まっていないか確認してみる価値があります。

⑥ うんちを我慢するしぐさがある

足をクロスさせて突っ張る、体を硬くする、部屋の隅やカーテンの陰に隠れる、しゃがみこんで動かなくなる。これらは「出そうとしている」のではなく、多くの場合「出したくないので我慢している」しぐさです。

トイレトレーニングの時期や、入園・入学で環境が変わったタイミングに始まりやすいのが特徴です。「園のトイレでしたくない」という気持ちがきっかけになることもあります。

⑦ 家庭でのケアを2週間続けても改善しない

水分や食事の工夫、生活リズムの調整を2週間ほど試しても変化がない場合は、ご家庭のケアだけで解決するのが難しい段階に入っています。すでに直腸に便が溜まってしまっていると、食事の改善だけでは追いつかないためです。

こんなときは、早めに受診してください

次の場合は便秘以外の病気が隠れていることがあるため、様子を見ずにご相談ください。

  • ・生まれてすぐの時期に、最初の便(胎便)が出るまで時間がかかった
  • ・体重が増えない、または減っている
  • ・繰り返し吐く、緑色のものを吐く
  • ・お腹が著しく張っている
  • ・強い腹痛があり、ぐったりしている・発熱を伴う
  • ・血便の量が多い、または出血が続く

「そのうち治る」と待つことがすすめられない理由

子どもの便秘には、抜け出しにくい悪循環があります。

便が硬くなる

出すときに痛い

痛いから我慢するようになる

さらに便が溜まり、もっと硬くなる

この状態が続くと、直腸が便で押し広げられた状態に慣れてしまい、便意そのものを感じにくくなります。「うんちがしたい感覚が分からない」お子さんは、決してめずらしくありません。

こうなると、生活習慣の改善だけで元に戻すのは難しくなります。逆に言えば、悪循環に入る前にご相談いただくほど、治療はシンプルで短く済みます。

便秘で受診したら、どんなことをするの?

「浣腸されるのでは」「痛いことをされるのでは」とご心配される保護者の方も多いのですが、まずは丁寧にお話をうかがうところから始めます。

  • 問診:排便の回数・便の硬さ・いつごろから・食事や生活の様子・きっかけになりそうな出来事などをうかがいます
  • 診察:お腹をやさしく触って、便が溜まっていないかを確認します
  • 必要に応じた検査:状態によってレントゲンで確認することがあります
  • 治療:まず溜まった便を出し、その後は「やわらかい便が痛みなく出る状態」をしばらく維持していきます

受診の前に、「いつ、どんな便が出たか」を数日分メモしていただけると診察がスムーズです。便の写真をスマートフォンで撮っておいていただくのも、とても参考になります。

よくある誤解:「便秘の薬は癖になる」

小児の便秘に使うお薬は、腸を無理に動かすものばかりではなく、便に水分を保たせてやわらかくするタイプが中心です。長く使ったからといって自分で出せなくなるものではありません。

むしろ、「痛くない排便」を繰り返して自信を取り戻すことが治療の目的です。改善してきたら、医師と相談しながら少しずつ減らしていきます。

よくあるご質問

Q. 毎日出ていなければ便秘ですか?

いいえ。2日に1回でも、やわらかい便が痛みなく出ていれば問題ありません。回数よりも「硬さ」と「つらさ」を目安にしてください。

Q. ヨーグルトや食物繊維をとらせれば治りますか?

予防にはとても大切ですが、すでに便が溜まってしまっている状態では、食事の工夫だけで解消するのは難しいことが多いです。まず溜まった便を出してから、再発を防ぐために食事や生活リズムを整えていくのが基本的な流れになります。

Q. 赤ちゃんに綿棒浣腸をしてもいいですか?

綿棒での刺激は、方法を守れば家庭で行っていただける対応のひとつです。ただし毎回必要になるようであれば、それ自体が受診のサインです。やり方や頻度は月齢によって異なりますので、診察時にお気軽にお尋ねください。

Q. トイレトレーニング中に便秘になりました。どうすれば?

まずは「出すこと」を優先し、トレーニングは一度ゆるめてかまいません。我慢の習慣がつくほうが長引きます。叱らずに、出せたときにしっかりほめてあげてください。

まとめ

子どもの便秘は、とてもよくある相談です。そして、早い段階であるほど治りやすいという特徴があります。

「これくらいで受診していいのだろうか」と迷われたときこそ、ご相談のタイミングです。お子さんが痛い思いをしないうちに、一緒に整えていきましょう。

うえだ小児科では、お子さんの排便の状態をうかがいながら、治療方法をご提案しています。お子さんの便秘、お気軽にご相談ください。