監修:うえだ小児科 院長 植田香子(小児科専門医)

秋が深まり空気が乾燥してくると、「子どもの肌がカサカサして白く粉をふいている」「すねやお腹をよくかいている」というご相談が増えてきます。

子どもの肌は大人より薄く、水分を保つ力も未熟なため、冬はとても乾燥しやすい状態です。ただ、保湿は「塗っているかどうか」よりも「量と塗り方」で効果が大きく変わります。

この記事では、乾燥肌が湿疹になってしまう前にご家庭でできる保湿のコツと、受診を考えたいサインをわかりやすくまとめました。

この記事のポイント

  • 乾燥肌を放っておくと、かゆみ → かき壊し →「皮脂欠乏性湿疹」へ進むことがあります
  • 保湿剤は「ティッシュが貼りつくくらい」たっぷりが目安です
  • お風呂上がりはできるだけ早く(目安5〜10分以内)塗りましょう
  • 赤み・ブツブツ・眠れないほどのかゆみがあれば、保湿だけでなく治療が必要です

なぜ冬は子どもの肌が乾燥しやすいの?

肌のいちばん外側には「角層」という薄いバリアがあり、皮脂や保湿成分が水分の蒸発を防いでいます。子どもの肌は次のような理由から、このバリアが崩れやすいのが特徴です。

  • 皮膚が薄い:大人の約半分の厚さといわれ、外からの刺激を受けやすい
  • 皮脂が少ない:生後しばらくを過ぎると皮脂の分泌が減り、思春期まで少ない時期が続く
  • 冬の環境:湿度の低下、暖房、熱いお風呂、厚着による汗などが重なる

特に乾燥しやすいのは、すね・太もも・お腹・背中・腕の外側など、皮脂腺が少ない部位です。

乾燥肌が「湿疹」に変わるまでの流れ

① 乾燥してバリアが低下 → ② かゆくなる →
③ かいて肌が傷つく → ④ 赤み・ブツブツ(湿疹)

この状態を「皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)」といいます。かくほどバリアが壊れてさらにかゆくなる悪循環に入りやすいため、①の段階で保湿をしっかり行うことが何よりの予防になります。

また、もともとアトピー性皮膚炎がある子は、冬に乾燥から症状が悪化しやすい傾向があります。

保湿剤の「正しい量」はどれくらい?

「毎日塗っているのに良くならない」というお子さんの多くは、量が足りていないことがほとんどです。目安として、皮膚科・小児科で使われる「FTU(フィンガーチップユニット)」という考え方をご紹介します。

量の目安(FTU)

軟膏・クリーム:大人の人差し指の先から第一関節まで出した量(約0.5g)

ローション:1円玉くらいの大きさに出した量

→ この量で大人の手のひら2枚分の広さに塗れます

体の部位ごとの目安(FTU)

年齢 顔・首 片腕・片手 片脚・片足 胸・お腹 背中・おしり
3〜6か月 1 1 1.5 1 1.5
1〜2歳 1.5 1.5 2 2 3
3〜5歳 1.5 2 3 3 3.5
6〜10歳 2 2.5 4.5 3.5 5

※一般的に使われているFTUの目安です。お子さんの体格や肌の状態によって調整してください。

実際に塗ってみると「思ったより多い」と感じる方がほとんどです。塗ったあとに肌がしっとりテカッと光り、ティッシュを1枚当てると落ちずに貼りつくくらいが、十分に塗れているサインです。

効果を高める塗り方・タイミング

1. お風呂上がりは「すぐ」に塗る

入浴後の肌は一時的に潤っていますが、そのあと急速に水分が逃げていきます。体をやさしく拭いたら、できれば5〜10分以内に保湿しましょう。服を着せる前に、脱衣所で塗ってしまうのがおすすめです。

2. すり込まず「のせて広げる」

保湿剤を手のひらに取り、肌の数か所に点々と置いてから、手のひら全体でやさしく広げます。ゴシゴシすり込むと刺激になるので注意しましょう。シワ(皮膚のすじ)に沿って横方向に広げると、ムラなく塗れます。

3. 1日2回が理想

お風呂上がりに加えて、朝の着替えのタイミングでももう一度塗れると理想的です。忙しい朝は、乾燥しやすいすね・腕・顔だけでも大丈夫です。

4. 「良くなってもやめない」

カサカサが治まると塗るのをやめてしまいがちですが、冬の間は乾燥がくり返します。きれいな肌を保つために、シーズン中は毎日続けるのがコツです。

保湿剤の種類と選び方

保湿剤にはいくつかのタイプがあり、季節や部位、お子さんの好みで使い分けます。

タイプ 特徴 向いている場面
軟膏
(ワセリンなど)
肌の表面に膜を張って水分を逃がさない。刺激が少なくしみにくいが、ベタつきやすい 乳児、特に乾燥が強い部位、口のまわり・ほっぺ
クリーム 伸びがよく、保湿力と使い心地のバランスがよい 全身のふだん使い
ローション・泡 さらっとしていて広い範囲に塗りやすい。保湿の持ちはやや短め 背中など広い範囲、頭皮、ベタつきを嫌がる子

病院で処方される保湿剤にはヘパリン類似物質(肌に水分を抱え込ませるタイプ)や白色ワセリン(膜で水分の蒸発を防ぐタイプ)などがあります。お肌の状態を診察したうえで、必要に応じて処方しています。

市販の保湿剤を選ぶときのポイント

  • 香料・着色料などの添加物が少ないもの
  • 「尿素」入りは、かき傷や赤みがある肌や乳児ではしみることがあるため注意
  • お子さんが嫌がらず、毎日続けられる使い心地のもの

保湿と一緒に見直したい冬の生活習慣

  • お風呂はぬるめに:38〜39℃くらいで、長湯は避けましょう。熱いお湯は皮脂を奪います
  • 石けんはよく泡立てて手で洗う:ナイロンタオルでこするのは避けます。乾燥が強い部位は毎回石けんを使わなくてもかまいません
  • 部屋の湿度は50〜60%:加湿器や濡れタオルを活用しましょう
  • 肌着は綿素材:ウールやチクチクする素材が直接肌に触れないようにします
  • 厚着しすぎない:汗をかくとかゆみの原因になります
  • 爪を短く切る:かき壊しによる悪化やとびひを防ぎます

こんなときは受診を考えましょう

保湿は「予防」と「軽い乾燥」にはとても効果的ですが、すでに湿疹(炎症)になっている肌は、保湿だけでは治りにくいことがあります。次のような様子があれば、お気軽にご相談ください。

受診の目安チェック

  • ☐ 赤み・ブツブツ・ガサガサした湿疹がある
  • ☐ かゆみで夜中に目を覚ます、眠れない
  • ☐ かき壊して血が出ている、じゅくじゅくしている
  • ☐ 黄色い汁やかさぶたが出て広がっている(とびひの可能性)
  • ☐ 1〜2週間しっかり保湿しても良くならない
  • ☐ ひじの内側・ひざの裏・首などに湿疹をくり返している(アトピー性皮膚炎の可能性)

湿疹がある場合は、ステロイドなどの塗り薬で炎症をしっかり抑えてから保湿でよい状態を保つのが基本です。塗り薬に不安がある方も、診察の中でていねいにご説明しますのでご安心ください。

赤ちゃんの湿疹については「赤ちゃんの湿疹、いつまで様子見でいい?」、アトピー性皮膚炎についてはアトピー性皮膚炎のページもあわせてご覧ください。

塗り薬の使い方については「ステロイドは怖い?」小児科医が答える、子どもの塗り薬の正しい使い方で詳しく解説しています。

よくあるご質問

Q. 赤ちゃんでも毎日保湿したほうがいいですか?

A. はい。新生児期から毎日保湿をすることで、アトピー性皮膚炎の発症が少なくなったという研究報告もあります。肌トラブルがない赤ちゃんでも、冬は特に毎日の保湿をおすすめしています。

Q. 保湿剤とステロイドの塗り薬、どちらを先に塗ればいいですか?

A. 一般的には、先に保湿剤を全身に広く塗り、そのあと湿疹のある部分に塗り薬を重ねる方法が多く使われています。ただし薬の種類や肌の状態によって指示が異なることがあるため、処方時の説明に従ってください。

Q. ベタベタするのを嫌がって塗らせてくれません。

A. ローションや泡タイプなど、さらっとした使い心地のものに変えると続けやすくなることがあります。歌を歌いながら、ぬいぐるみに「お手本」で塗ってから、など遊びの延長にするのもおすすめです。診察時にお子さんに合ったタイプをご相談ください。

Q. 1本の保湿剤はどのくらいでなくなるのが普通ですか?

A. 体格によりますが、幼児の全身にしっかり塗ると、1回で数グラム〜10グラム程度使います。チューブがなかなか減らない場合は、量が足りていないサインかもしれません。

まとめ

  • 子どもの肌は薄く皮脂も少ないため、冬はとても乾燥しやすい
  • 乾燥 → かゆみ → かき壊し → 湿疹の悪循環を、保湿で断ち切ることが大切
  • 保湿剤はFTUを目安にたっぷりと、お風呂上がりすぐに、すり込まずやさしく
  • 赤み・強いかゆみ・かき壊しがあるときは、保湿だけでなく治療が必要

うえだ小児科では小児皮膚科に力を入れており、保湿剤や塗り薬の量・塗り方も、実際のやり方を交えてご説明しています。「うちの子の塗り方、これで合っている?」という小さなご相談でも、お気軽にお越しください。

お子さんの肌のこと、お気軽にご相談ください

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