監修:うえだ小児科 院長 植田香子(小児科専門医)
「塗り薬を塗るとすぐきれいになるのに、やめると数日でまた赤くなる」「この“いたちごっこ”がいつまで続くの?」――アトピー性皮膚炎や湿疹をくり返すお子さんの保護者から、とてもよく聞くお悩みです。
実はこのぶり返しには、はっきりとした理由があります。そして、その対策として小児科・皮膚科で広く取り入れられているのが「プロアクティブ療法」という塗り方です。このコラムでは、なぜ湿疹はぶり返すのか、プロアクティブ療法とはどんな治療なのかを、わかりやすくご説明します。
このコラムでわかること
湿疹が「やめるとぶり返す」本当の理由
塗り薬で赤みやかゆみが引くと、見た目にはきれいに治ったように見えます。ところが、皮膚の奥にはまだ炎症の“火種”が残っていることが少なくありません。
火事にたとえると、表面の炎が消えても、くすぶった火種が残っている状態です。ここで塗り薬を完全にやめてしまうと、残った火種から再び炎症が燃え広がり、数日〜数週間で湿疹がぶり返してしまいます。
ポイント:「見た目がきれい=治った」ではありません。ぶり返しをくり返すのは、薬が効かないからではなく、炎症が残ったまま治療を終えてしまっていることが多いのです。
プロアクティブ療法とは?これまでの塗り方との違い
これまで一般的だったのは、「悪くなったら塗る、良くなったらやめる」という塗り方です。これを「リアクティブ療法」といいます。症状が出てから対処するため、ぶり返しのたびに強い炎症が起こり、そのたびに薬を多く使うことになりがちです。
これに対してプロアクティブ療法は、炎症をしっかりしずめたあと、見た目がきれいになってからも、湿疹が出やすい場所に塗り薬を「間隔をあけて」定期的に塗り続ける方法です。くすぶる火種を先回りして消していくことで、ぶり返しを防ぎます。日本のアトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでも、くり返す湿疹の治療法として推奨されています。
| 比べる点 | リアクティブ療法 | プロアクティブ療法 |
|---|---|---|
| 塗るタイミング | 悪くなったときだけ | きれいになってからも定期的に |
| ぶり返し | 起こりやすい | 起こりにくい |
| 薬の総量 | 悪化のたびに増えがち | 長い目で見ると減らしやすい |
| お子さんの生活 | かゆい時期と落ち着く時期の波が大きい | かゆみの少ない状態を保ちやすい |
治療の進め方(3つのステップ)
プロアクティブ療法は、医師が皮膚の状態を確認しながら段階的に進めます。塗る回数や期間はお子さんによって異なりますが、おおまかな流れは次のとおりです。
STEP 1 炎症をしっかりしずめる
まずは毎日、十分な量の塗り薬で赤み・かゆみ・ざらつきが完全になくなるまで治療します。「少し良くなったからやめる」ではなく、肌がつるつるになるまでが目標です。
STEP 2 塗る間隔を少しずつあける
きれいな状態になったら、毎日→1日おき→週2回…と、医師の指示のもとで塗る間隔を少しずつ広げていきます。湿疹が出ていた場所には、見た目がきれいでも塗り続けます。
STEP 3 良い状態をキープする
週に数回の塗り薬で再発しない状態が続けば、さらに間隔をあけたり、薬の種類を変えたりしていきます。保湿剤はこの間もずっと毎日続けるのが基本です。
ご注意:塗る量・回数・間隔は、湿疹の状態や部位、お子さんの年齢によって調整が必要です。ご自身の判断で始めたり、急にやめたりせず、必ず医師と相談しながら進めてください。
うまく続けるためのコツ
塗る量は「たっぷりめ」が正解
薬の量が少ないと炎症をしずめきれず、結果として長引く原因になります。目安は、大人の人差し指の先から第一関節まで出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の広さ。塗ったあと、ティッシュがくっつくくらいのテカリが出る量です。
「塗る日」を決めてカレンダーに
「月曜と木曜はお薬の日」のように曜日を決め、カレンダーに印をつけると塗り忘れを防げます。お子さんと一緒にシールを貼るのもおすすめです。
定期的に受診して皮膚をチェック
プロアクティブ療法は、皮膚の状態に合わせて間隔や薬を調整していくのが大切です。症状が落ち着いていても、定期的な受診で確認していきましょう。
塗り薬でコントロールが難しい場合は
プロアクティブ療法にはステロイド外用薬のほか、ステロイド以外の塗り薬を使うこともできます。顔や首など皮膚の薄い部位や、長く続ける場合には、こうした薬を組み合わせることもあります。
それでも十分に良くならない中等症以上のアトピー性皮膚炎には、生後6か月から使える注射薬「デュピクセント」という選択肢があります。かゆみや炎症のもとになる物質の働きを抑える薬で、塗り薬とあわせて使います。「長く治療しているのに、なかなか良くならない」という方は、一度ご相談ください。
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よくあるご質問
Q. きれいな肌にステロイドを塗り続けて、副作用は大丈夫ですか?
A. プロアクティブ療法は、塗る間隔をあけながら行うため、毎日塗り続けるよりも薬の量を抑えられます。医師が皮膚の状態を確認しながら進めれば、安全に続けられる治療です。心配なことがあれば遠慮なくお尋ねください。
Q. いつまで続ければいいですか?
A. お子さんによって異なります。良い状態が安定して続けば、塗る間隔をさらにあけ、最終的には保湿だけで過ごせることを目指します。
Q. 保湿剤だけではだめですか?
A. 保湿はとても大切ですが、保湿剤には炎症をしずめる作用はありません。炎症の火種が残っている間は、塗り薬との併用が必要です。
Q. 他の病院で治療中ですが、相談できますか?
A. はい、ご相談いただけます。現在使っているお薬がわかるもの(お薬手帳など)をお持ちください。
くり返す湿疹、一緒に「ぶり返さない肌」を目指しましょう
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