監修:うえだ小児科 院長 植田香子(小児科専門医)
「冬になると子どもの肌がカサカサして、かゆそうに掻いている」「これってただの乾燥肌?それともアトピー?」――この時期、診察室でとても多くいただくご相談です。
乾燥肌とアトピー性皮膚炎は見た目が似ていることもあり、ご家庭で見分けるのは簡単ではありません。ただ、いくつかのポイントを知っておくと「様子を見てよい状態」と「受診したほうがよい状態」の目安がつきやすくなります。このコラムでは、小児科医の立場から見分け方と受診のタイミングをお伝えします。
このコラムでわかること
乾燥肌とアトピー性皮膚炎、そもそも何が違うの?
乾燥肌は、皮膚のうるおい(水分や皮脂)が不足して、バリア機能が一時的に弱まっている状態です。子どもの皮膚は大人よりも薄く、皮脂の分泌も少ないため、空気が乾燥する秋冬はとくにカサカサしやすくなります。多くは保湿をきちんと続けることで落ち着きます。
一方アトピー性皮膚炎は、バリア機能の弱さに加えて皮膚の中で「炎症」が続いている病気です。かゆみのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、保湿だけでは炎症をしずめきれないことが多くあります。
ポイント:乾燥肌は「うるおい不足」、アトピー性皮膚炎は「うるおい不足+炎症」。乾燥肌が続いて掻きこわすうちに湿疹になることもあり、両者ははっきり線引きできない場合もあります。
見分ける3つのポイント
① かゆみの強さ
乾燥肌のかゆみは比較的軽く、保湿すると落ち着くことがほとんどです。アトピー性皮膚炎では夜に眠れない、寝ている間にも掻いている、掻いた跡(ひっかき傷)が残るなど、かゆみが生活に影響していることが多くみられます。
② 湿疹が出る場所(年齢で変わります)
アトピー性皮膚炎は、年齢ごとに湿疹が出やすい場所に特徴があります。赤ちゃんは顔や頭から始まり、体や手足へ広がることが多く、幼児〜学童期になると首まわり・ひじの内側・ひざの裏など、こすれやすい関節の内側に出やすくなります。また、左右対称に出ることが多いのも特徴です。乾燥肌は、すねや背中、おなかなど広い範囲が白っぽく粉をふいたようになるのが一般的です。
③ 続いている期間とくり返し
アトピー性皮膚炎の診断では、かゆみのある湿疹が「良くなったり悪くなったり」をくり返し、乳児では2か月以上、それ以上の年齢では6か月以上続いているかが一つの目安になります。一方、乾燥肌は季節や環境に左右され、保湿や加湿で改善しやすいのが特徴です。
| 比べる点 | 乾燥肌 | アトピー性皮膚炎 |
|---|---|---|
| 肌の見た目 | 白っぽくカサカサ、粉をふく | 赤み・ブツブツ・じゅくじゅく、掻き続けるとごわごわ厚くなる |
| かゆみ | 軽め、保湿で落ち着く | 強い、夜に掻いて目が覚める |
| 出やすい場所 | すね・背中・おなかなど広範囲 | 乳児:顔・頭→体 幼児以降:首・ひじの内側・ひざの裏 |
| 経過 | 季節で変化、保湿で改善しやすい | 良くなったり悪くなったりをくり返す |
| 主なケア | 保湿・加湿・入浴の工夫 | 保湿+炎症をしずめる塗り薬 |
ご家庭でできるセルフチェック
お子さんの様子で、あてはまるものはいくつありますか?
- ☐ 毎日保湿をしているのに、赤みやブツブツが消えない
- ☐ 夜、かゆがって目を覚ます・寝ながら掻いている
- ☐ ひじの内側やひざの裏、首まわりに湿疹がある
- ☐ 湿疹が左右対称に出ている
- ☐ 治ったと思ってもすぐにぶり返す
- ☐ 掻きこわして血がにじんだり、じゅくじゅくしている
- ☐ 家族にアトピー性皮膚炎・ぜんそく・花粉症などのアレルギーがある
2つ以上あてはまる場合は、乾燥肌だけでなく炎症が起きている可能性があります。セルフチェックはあくまで目安ですので、気になる場合は早めにご相談ください。
受診をおすすめする目安
次のような場合は、「様子を見る」より受診をおすすめします。
- 保湿を1〜2週間しっかり続けても良くならない
- かゆみで眠れない、機嫌が悪い、集中できないなど生活に影響が出ている
- 市販薬を使っても改善しない、使うのが不安
- 湿疹が広がっている、何度もぶり返す
早めの受診が必要なサイン
湿疹が急に広がってじゅくじゅくする、黄色いかさぶたができる、水ぶくれや小さなくぼみが多数出る、発熱を伴う――といった場合は、とびひやヘルペスなどの感染を合併している可能性があります。早めに受診してください。
「アトピーと言われるのが怖い」と受診をためらう方もいらっしゃいますが、湿疹は早く炎症をしずめるほど治りやすく、再発もしにくくなります。また、乳児期の湿疹は、皮膚から食べ物のアレルギーが起こるきっかけになることも分かってきています。「乾燥肌かも」の段階でご相談いただいてかまいません。
当院での診察と治療の流れ
うえだ小児科では、皮膚の状態を直接診察し、湿疹が出始めた時期や経過、ご家族のアレルギー歴などを丁寧にうかがって判断します。必要に応じて血液検査で炎症の程度を確認することもあります。
乾燥肌の場合は、お子さんの肌に合った保湿剤の選び方と、効果の出る塗り方をお伝えします。アトピー性皮膚炎の場合は、保湿に加えてステロイド外用薬などで炎症をしっかりしずめ、その後は良い状態を保つための治療(プロアクティブ療法)へ進みます。ステロイド以外の塗り薬もあり、塗り薬だけでは十分に良くならない場合には、生後6か月から使える注射薬「デュピクセント」という選択肢もあります。
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よくあるご質問
Q. 血液検査をすればアトピーかどうか分かりますか?
A. アトピー性皮膚炎は、血液検査だけで診断する病気ではありません。皮膚の状態や経過をもとに診断し、血液検査は炎症の程度やアレルギーの有無を確認する目的で、必要に応じて行います。
Q. アトピーと診断されたら、ずっと治らないのですか?
A. 子どものアトピー性皮膚炎は、成長とともに軽くなることも多い病気です。適切な治療で炎症をコントロールできれば、湿疹のない状態で過ごせるお子さんもたくさんいます。
Q. 食べ物が原因でアトピーになっているのでしょうか?
A. 食べ物がアトピー性皮膚炎の主な原因になるケースは多くありません。自己判断で食事を制限すると、成長に必要な栄養が不足するおそれもあります。気になる場合は、まずご相談ください。当院では指先からの少量の採血で調べられるアレルギー検査も行っています。
Q. 小児科と皮膚科、どちらに行けばいいですか?
A. お子さんの湿疹は小児科でも診療しています。当院では皮膚とあわせて、食物アレルギーやぜんそくなど、ほかのアレルギーの心配もまとめてご相談いただけます。また、当院では皮膚疾患の診療に力を入れていますので、湿疹や肌トラブルのことも安心してご相談ください。

